増加する糖尿病。平成14年度、糖尿病で受診した373名(男164名、女209名)について、眼合併症の調査をし(前任地:札幌東区の総合病院)、地区病診連携学会で発表しました。結果は、図1のごとくであり糖尿病はさまざまな眼合併症をおこすことが明らかとなりました。、驚いたことに、東京での他大学病院の調査と、頻度的にほぼ一致していました。このことは、大都市も地方都市も同じような結果がでており、糖尿病は全国津々浦々に進行していることが、予想されました。
年齢別頻度を、図2に示しました。インシュリン非依存型が多いせいか中高年以降に集中しています。男女間に差があるかどうかは今回の調査でははっきりしません。

図1:糖尿病眼合併症頻度

図2:年齢別男女別罹患数

 

当院では日本糖尿病眼学会より発行の糖尿病眼手帳をおくばりしています。
以下に、日本糖尿病眼学会の分類治療について転記します。

糖尿病網膜症の分類

単純網膜症
眼底所見:網膜の小出血、毛細血管瘤、硬性白斑(蛋白質・脂肪の沈着)
自覚症状:全くない

前増殖網膜症
眼底所見:網膜の細小血管拡張・閉鎖・ 走行異常、軟性白斑(硬性白斑の進行)
自覚症状:ほとんどない

増殖網膜症
眼底所見:新生血管の発生、硝子体出血、網膜剥離
軽度から高度の視力低下、失明

網膜症の治療法

単純網膜症
内科的な血糖のコントロールが治療の第一です。それとともに止血剤や血管拡張剤などの内服薬を投与して、経過観察を行います。

前増殖網膜症(やや危険)
新生血管の発生を防ぐために「レーザー光凝固術」を行います。この時期を逃さないことが、治療のポイントとなります。レーザー光凝固は入院せずに外来て出来ます。

増殖網膜症(危険)
ここまで進行すると光凝固法での治療は難しく、外科的な硝子体手術が行われます。硝子体の濁りや網膜剥離は 60~70% が治りますが、完全な視力の回復は難しいのが現状です。

精密眼底検査の目安

網膜症のない人  1年に1回
単純網膜症の人  3~6ヶ月に1回
前増殖網膜症の人 1~2カ月に1回
増殖網膜症の人  2週間~1ヶ月に1回

精密眼底検査は瞳を開いて(散瞳して)行う検査です。
眼底以外の合併症、たとえば白内障や緑内障の検査のために、少なくとも月に一回は眼科の検診を受けてください。