今でも失明原因第一位の緑内障、その中でも60%以上をしめるのが、正常眼圧緑内障(NTGと呼ばれている)です。日本人に多く、40歳以上の2~3%が罹患しており、眼健診などでもよく発見される、決して少なくない疾患でです。しかも女性に多いのが特徴です。
そもそも緑内障とは、眼内の栄養をつかさどる房水の排出口(隅角部)がなんらかの原因で詰まり、その高い眼球内圧(眼圧)が視神経の頭部(乳頭部)を圧迫して視神経が部分的に萎縮したり血流障害を起こして視野障害に至る病気です。その隅角部のタイプから、閉塞型、開放型に分類されています。その開放型の中に「眼圧が正常範囲で、視神経乳頭部のみがくぼんで緑内障と同じような視野障害をおこしている」ものがあります。これを正常眼圧緑内障(NTG)と呼んでいます。当初は開放隅角緑内障の一部と思われていましたが、徐々にその独立した疾患として確立されつつあります。
診断は視神経乳頭部やその付近の眼底写真、および眼底三次元画像解析(OCT)が重要で、さらに視野、眼圧、隅角検査などで確認が必要です。さらに他の視神経疾患や、過去に高眼圧を起こした可能性のあるステロイド剤の使用経験、糖尿病、甲状腺疾患などの鑑別も必要です。
札幌エルプラザ阿部眼科でもOCTを導入し、早期発見や治療効果の診断に役立てています。
原因は不明ですが、視神経乳頭部の血管痙攣などにともなう血液の循環障害や構造の弱さが指摘されています。さらに遺伝性なども指摘されており、家族歴のある人も注意が必要です。近視も構造の弱さが指摘されている重要な危険因子です。血管痙攣をおこす偏頭痛や、バージャー病の有無、乳頭部の虚血を起こす可能性のある大量出血の既往、低血圧(特に就寝時)、貧血、無呼吸発作なども注意を要します。
正常眼圧緑内障での眼圧正常値は一般の人より低いと考えられ、治療は点眼薬による眼圧下降、視神経乳頭に対する循環改善薬、神経賦活などの内服薬が使用されます。それでも視野欠損の進行が止まらないとき手術が必要な場合もあります。しかし鑑別疾患のため経過観察を余儀なくされる場合も多くあり、無治療のまま定期受診が必要となることもあります。ピカピカ光る症状や夕方・夜間に暗く感じて受診される方もいますが多くは自覚症状がない場合が多く、現在のところ検診などは積極的にうけ、早期発見、早期治療が基本となります。